青色コラム

著者紹介:1995年生まれ。大阪生まれ、東京育ち。現在沖縄にて大学生として活動中。

なぜ青色か、それは青い空の無限の広がりと、己が青さを意味しているのである――。 嘘です。ただ青が好きなだけです。2秒で考えました。 非公認コラムニスト・くぼただいちが日々の出来事や活動、映画などの鑑賞批評もどき等を綴ります。

映画 「凶悪」 凶悪過ぎてなぜ面白い

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出演・山田孝之ピエール瀧リリー・フランキー 他

脚本監督・白石和彌

音楽・安川午朗

公開・2013 日本

ストーリー・スクープ雑誌「明潮24」に東京拘置所に収監中の死刑囚・須藤(ピエール瀧)から手紙が届く。記者の藤井(山田孝之)は上司から須藤に面会して話を聞いて来るように命じられる。藤井が須藤から聞かされたのは、警察も知らない須藤の余罪、3件の殺人事件とその首謀者である「先生」と呼ばれる男・木村(リリー・フランキー)の存在だった。木村を追いつめたいので記事にして欲しいという須藤の告白に、当初は半信半疑だった藤井も、取材を進めるうちに須藤の告発に信憑性があることを知ると、取り憑かれたように取材に没頭して行く。――ウィキペディアより抜粋

 

 

評価・3.7/5.0

 

TSUTAYAで「今日は何借りようかな~」とぷらぷら流していたら目に留まったこのジャケット。

 

奥の二人既に悪すぎんだろ。

 

ジャケ写から早くも滲み出る悪行の数々が目に浮かんでくるようです。このリーリー・フランキーとか絶賛痴漢してそう。

そこで痴漢の真相を見届けるべくいそいそと借りて帰り見てみたら・・・・痴漢どころかレイプしてました。そんでもってクスリ打って放火して、なんか川に簀巻きの人突き落として、仲間拳銃で打ち殺して、まあこれは全てピエール瀧演じるヤクザ・須藤の鬼畜プレイなんですが、

 

だめだ、悪すぎだこれ。

 

完全に凶悪っぷりを舐めてました。しかもこれ全て冒頭カット。しょっぱなからぶっ飛ばし過ぎです。

もうね、須藤がすごいのかピエールがすごいのか、人を楽しむでも恨むでもなくただそこにあるから壊すというお手軽さで殺していくんですよ。ひたすらに怖い。

 

あれよあれよという間に須藤は警察にパクられます。ここで一安心かと思いきや、実は須藤にはまだ警察にもばれてない余罪が3件もありました。

それを解き明かすのが週刊誌記者の藤井くん山田孝之も相当な凶悪っぷりを披露してくれるのかなと勝手に予想していたので、彼の正義感溢れる役柄にもう一安心。

 

藤井くんが警察も脱帽レベルの執念深い捜査を進めていくと、浮かび上がってくるもう一人の凶悪人・「先生」の姿。リリー・フランキー演じる先生は不動産ブローカーなんですが、

この先生のサイコパスっぷりがもう完全にイっちゃってます。

ここから場面が飛んで、3件の余罪の全貌が再現されていく展開に。

 

★3件の殺人と先生の興奮度合い★

①借金が返せなかった老人を先生が絞殺、そしてバラバラにして焼却炉でバーニング事件

先生がおそらく初めて起こしたであろう殺人事件。須藤に連絡して遺体を鉈でザクザク解体し、知人宅の焼却炉で燃やしました(大迷惑)

先生は仕上げの着火時に「一度人燃やしてみたかったんだ☆」と喜々として点燈されました。なんだこいつら。

②土地持ちの老人を行方不明にして土地を掠め取っちゃえ大作戦(生き埋めversion)

タイトルコール通りの内容ですが、生きたまま砂をかけられて見えなくなっていく老人を見下ろしながら先生の一言。「そんな顔されたら興奮するなぁ(しみじみ)」。もう逆に渋いっす先生。

③借金を生命保険で減らすため「おじいちゃんを殺してほしい」と依頼してきた家族と、それに快く応える先生の感動物語(酒とスタンガンによる拷問version)

どんどんタイトルが長くなって申し訳ないのですが、つまりそういうことです。外傷無しに殺害するためにスピリタスの強要やら高圧電流やらでおじいちゃんをひたすら拷問。現場は先生の大爆笑に包まれて、大学生の飲み会のような和気あいあいとした雰囲気すら流れています。先生のムードメーカーっぷりが存分に発揮されている一場面。

 

とまあ、こんな調子で実に本編の半分近くが拷問殺人ムービーで構成されています。少なくともタイトル負けは全くしていないと言えるでしょう。

 

 

しかし!映画「凶悪」の見るべきポイントはそんなスナッフフィルム的要素だけではないのです!実は人間ドラマとしてかなり重厚な作品に仕上がっているのです。

極悪人の二人にも人間臭い一面やドラマがあり、正義を追い求める藤井くんサイドにも家庭の崩壊や取材が行き過ぎて住居侵入や公務執行妨害にまで及んでしまうなど、悪が忍び寄ります。

事件の重要な参考人が、結果的に藤井くんの追い込みによって事故死してしまうのも印象的なシーン。善悪の定義を見ているものに投げかけてきます。

 

藤井くんの命を削った取材が実り、先生は逮捕されるに至ります。拘置所で先生と藤井くんが向き合うラストシーン、先生は「今一番私を殺したがっているのは、須藤でもなく、遺族でもない」と言って、藤井君を指さし扉の向こうに去っていきます。

 

果たして、その殺意は善か、悪か。

 

人間はそんな二面性だけでは表しきれないということなのでしょう。誰の心の中にも、善と悪は混在している。その時々でどちらが自分を支配するのか、それだけの違いなのかもしれません。

 

なんだかんだ言って、結構おすすめな映画でした。

見終わって胸糞悪くなると思いきや、意外や意外、「いや面白かったよな・・・?」と自問してしまうほど面白かったです。あれだけの拷問ムービーを楽しめている時点で俺も凶悪なのか・・・?なんて思えてしまうのもこの映画の醍醐味なのかもしれませんね!

 

 

 

てな話が全て実話に基づいているっていうからほんと恐ろしい。

こいつら実在してたのかよ・・・。

そんじょそこらのホラーより怖い結末でした。

 

ではまた!

 

 

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原作はこちら

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

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